羞人たち


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優香 第十三章 1
2011/07/06 18:28

 騎馬戦ですべての服を失って、ついにグラウンドで素っ裸になってしまった優香。騎馬戦終了後も、服は与えられず、依然両手を縛られたままの状態で、一人悲しく校舎へ帰っていくのだった。

 午前中の競技はすべて終わり、昼休みになった。生徒たちは、昼食を取りに、ぞろぞろと校舎へ戻っていった。

 3年2組の生徒たちが自分たちの教室の前にたどり着くと、教室のドアの前に、全裸の女子が立っているのを発見した。

 優香だった。

 丸出しの股間と乳房を、手を縛られているため隠すこともできず、皆の視線に晒しながら、顔を伏せて鍵が開くのを待っていた。

 それを見たクラスの女子がわざとらしく悲鳴をあげた。

「きゃー、見て、あそこに露出狂がいるよ」
「ホントだ〜! でもどうしてうちらの教室の前にいるの。露出狂は露出狂らしく、外の、もっと人がいっぱいいるところにいればいいじゃない」
「よくもまあ男子に混じって騎馬戦やろうなんて考えついたものだよ。おっぱい晒す口実として、これ以上ないチャンスだったんでしょうねえ」
「おまけに下まで脱いじゃって。いやらしい股間を保護者や学校外の人たちに見られて、恥ずかしくないのかしらね」
「しかも騎馬戦終わってるのにそのままって……ホントあきれた女だわ」
「どうせならもう一生そのまま全裸でいなよ。家から学校まで、そのいやらしい胸と股間晒したままさあ」

 そう言うと女子たちのうちの一人が、顔を伏せて恥ずかしがっている優香のもとへ、つかつかと歩いていって、優香の、その丸出しの乳首(持ち主の羞恥もお構いなしに、色気を誇示するようにツンと澄まして立っている、ピンク色の乳首の先っちょ)を、憎らしげに指でつまんで、ねじった。

「いやっ……痛い!」

 優香は顔を歪ませる。屈辱に唇を噛みしめる。だが、何も言い返すことができない。

 相手の女子は、指を離すと、優香の顔ではなく、わざと優香の胸を見ながら(クラスメートの前で恥ずかしげもなく揺れている)冷たく言った。

「あたしたちの教室の前で、迷惑なんですけど。おっぱい丸出しの、そんな恥さらしの格好でいられて」

 優香は謝るしかなかった。

「ごめんなさい……」

「邪魔だからどっか消えてくれない? うちらの視界に入らないところにさあ」

「それは……」

 優香は言葉につまった。どこかへ消えたいとは優香自身も感じていたことだった。できることなら人のいない場所へ隠れてしまいたかった。

 しかし、実際問題として、この素っ裸で、しかも後ろ手に両手を縛られた今の無防備の状態で、逃げてどうなるのだろうか。ひと気のないところ、例えば薄暗い倉庫とか、使われていない実験室、へでも行こうものなら、それこそ興奮した男子生徒の格好の餌食になってしまうだろう。

 そのくらい、優香の姿はいやらしく、危険だった。いやらしく、挑発的な『歩くおま〇こ』だった。だからこんな状態で一人でいれば、それは犯してくださいと自分から言っているようなものである。

 だから優香としては、どんなに惨めで屈辱的であろうとも、なるべく人のたくさんいる(特に女子のたくさんいる)この場所に、留まるよりほかなかった。

「ねえ、早くどっか行ってよ」
「そんなにあたしたちに自慢したいの?」
「言っとくけど、うちらあんたの裸なんか見ても全然羨ましいとは思わないからね」
「そうそう、男子の手垢だらけの汚い裸なんて羨ましくもなんともないよねえ」
「……」

 優香はもう顔を伏せて黙っているしかなかった。逃げようにも、その先には、欲望に股間を膨らませた男子が待ち構えている。優香の無抵抗の裸に飛び掛かろうと、そのチャンスを窺っている。欲情の野獣と化した男子はもう何をするものかわからない。そんな危険な目に合わないためにも、優香は、自分を罵る女子たちの前に留まり続けなければならなかった。

(ああ、誰か助けて……逃げも隠れもできないこの状況から誰か私を救って……)

 優香は廊下を見回して千夏を探した。千夏なら、服を持ってきてくれるとか、せめて手のハチマキを解いてくれるとか、してくれるはずだった。が、千夏はどこにもいなかった。


 と、そのように優香が女子たちの罵声や中傷に必死に堪えていたとき、今までその様子を離れたところで眺めていた一人の女子が、ふと何かに気づいたらしく、突然大声で言った。

「ねえ、みんなちょっと! この壁のところ、なんか濡れてない?」

 それを聞いたクラスメートたちは、一斉に「え、なになに?」とその女子の方へ集まっていった。

「あ、ホントだ、濡れてる。誰か水でもこぼしたのかなあ」
「でもなんか臭くない? なんていうか、その……おしっこのにおい」
「ええ? そんなわけ……いやホントだ。ねえみんな、これおしっこの臭いがするよ!」
「ええ〜!」
「うそ〜!」
「でもいったい誰のおしっこ……」

 一瞬沈黙の間が訪れた。

 続いてクラスメートたちは、一斉に、ドアの前の優香の方を振り向いた。

 その瞬間の優香の反応、悲しそうに目を細めた、あきらめの、その表情はすべてを物語ってしまっていた。

 乳首をつねった先程の女子がすかさず優香につめ寄った。

「ねえ、あの壁のおしっこ、あれ、あんたがやったの?」

 優香はしばらく無言でいたが、やがて首を力なく振って否定した。

 しかし、その顔の表情は、明らかに自分がやったと、白状していた。

「嘘ついてるのまる見えだよ。正直に言いなさいよね。あれはあんたがしたんでしょ、あの汚いおしっこは?」

 優香の顔に広がるあきらめの色。すでにばれてしまっている嘘を、あくまでつき通すほどの図太さは、優香にはなかった。

「でも、違うの、あれは……」
「違くない! 理由はどうだっていいの。イエスかノーで答えなさい。あのおしっこはあんたがしたんでしょ?」

 優香はなおもためらったが、やがて答えた。

「……はい、そうです」

 うそ〜、信じらんな〜い、という冷たいざわめきが廊下中に広がった。

「でも、聞いて……!」

 優香は説明を試みようとした。あのおしっこは(自分がしたことはしたのだが)でも、それは、見ず知らずの男に、無理矢理させられたのだ。自分が裸なのをいいことに、ビデオカメラで撮影し、それをネタに脅迫して……。しかし、優香はすぐに断念せざるを得なかった。そんな話、誰も信じてくれるはずがなかった。またたとえ信じてもらえたにしても、そもそも何で男が来る前から全裸でいたのかという説明も(またそのさらに以前からの説明も)しなければならなかった。いまや事情は複雑になりすぎて、当の本人でさえ、信じられないほどだった。

 だから優香は何も言い訳することができず、黙っているよりほかなかった。

 相手の女子は再度優香を問い詰める。

「もう一度聞くけど、じゃあ、あんたは学校で、自分の組の教室の壁に向かって、おしっこしたっていうわけ?」

 優香は力なくうなずく。

「ちゃんと答えなさい!」
「……はい、そうです」
「何がそうなの?」
「……あたしは、学校の、自分の教室の、壁に、お……おしっこをしてしまいました」

 廊下中に広がる軽蔑の冷ややかな笑い声。相手の女子は、憎しみと怒りから、今にも優香に掴みかかりそうな雰囲気だった。が、相手にするのもバカバカしいというように、軽蔑の笑みを浮かべると、冷たく言い放った。

「そう、じゃあ早く掃除しなさいよね。あんたがしたんだったら、あんたが自分で片付けるのが、常識でしょ?」
「はい……」
「いますぐに!」
「え? いますぐ……ですか?」
「当たり前でしょ! それともあんた、教室の前におしっこ放ったらかしにしたまま、あたしたちにお昼ご飯食べろっていうの?」
「いえ……」と優香は首を振る。「じゃあ、あの……このハチマキ解い……」
「うるさい、そのままの状態でやりなさい。神聖な教室を冒涜した、罰よ」

 もう相手の言うとおりにするしかなかった。優香は込み上げる涙を必死にこらえて、教室に入って雑巾を取ろうとしたが、それをまた叱責された。

「何で雑巾使うのよ! あんたの汚いおしっこなんか拭いたら、もう二度と使えなくなるじゃない」
「でも……じゃあ、どうやって?」

 相手の女子は優香の机の上のカバンを、ごそごそと物色しだした。と、何やら取り出した。

「あ、これなんかちょうどいいんじゃない、雑巾に」

 と言ってクラス全員に見せつけるようにしたそれは、優香の朝まで穿いていたパンツとブラだった。

 優香の純白の下着の登場に、男子たちが「おおっ!」と色めきたったのは言うまでもない。近づいて奪い取ろうとする。匂いを嗅がせろと、本気だか冗談だかわからない声を飛ばす。

 優香は恥ずかしさに体じゅう赤くなりながら、その自分の下着の方へ駆け寄った。

「やめて! あたしの下着をそんなふうに扱わないで!」

 しかし、男子たちの視線が、超至近距離で、自分の丸出しの胸を凝視しているのに気がついて(いやっ、見ないで……)、優香は再び背を向けて遠ざかった。

「なに恥ずかしいふりしてんのよ」
「胸や股間を見せるのは平気でも、下着は恥ずかしいって、矛盾してると思うんですけど〜」
「ホントどこまでぶりっ子を演じれば気が済むんだか」
「ホントは恥ずかしくもなんともないのにねえ」

 周りの女子たちは優香が恥ずかしがって逃げると一斉に冷たい言葉を浴びせるのだった。

「お願い……それで拭いたら、もう穿けなくなっちゃう」

 優香は下着を振りかざす女子に遠くから言った。

「穿けなくなる?」言いながら相手は構わず下着を頭上でひらひらさせている。「穿けなくなるっていったって、どうせあんた穿かないじゃない? 露出狂のあんたにはパンツもブラも必要ないんでしょ? だから、これで拭きなさいよ」

 そしてその女子はそのまま下着を持って教室の外に出ると、廊下のおしっこの水たまりの中に、それを放り落とした。

 この瞬間、優香のパンツとブラジャーはおしっこを拭くためのただの雑巾と化した。

 優香はもうおとなしく掃除を始めるしかなかった。

カテゴリ:優香

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