羞人たち


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彩 序章 2
2011/07/13 20:25

 一時間後、着替えを済ませ、スタジオ入りした彩は、彼女には珍しい短めのタイトスカートを穿いていた。しかしそれは脅迫に規定されていた膝上20センチには遠く及ばない、せいぜい膝上10センチのものだった。いつも膝丈のスカートで放送に臨んでいる彩にとっては、それでも充分恥ずかしいものだった。

 命令を完全に無視したのではない。とにかく普段より短くはしたのだ。だからこれで何とか妥協してもらえると思った。また、犯人が誰かわからないが、動画を公開するとか、そんなひどいこと、できるはずがない、単なるイタズラにすぎないだろうと甘く考えてもいた。

 番組のスタッフは、彩が今までにない短いスカートを穿いてきたので不思議に思った。サービス精神旺盛で視聴者を楽しませることの大好きな彩だったが、しかし性的な意味で視聴者を喜ばせることは、これまで頑なに拒んできたのだった。ミニスカートや短パン、胸元の大きく開いたシャツなど、番組スタッフのいやらしい意図が窺える衣装は、スタイリストにやんわりと頼んで変更してもらっていた。

「どうしたの、彩、スカート短くしちゃって?」

 共演の女子アナ、彩と同期の真希は、彩の珍しい衣装を見て、すかさず訊ねた。

「いや、その……梅雨も明けたから、この方が、視聴者の方にもわかりやすいかなと思って……」

 脅迫されたからとは言えるはずがなく、彩はスタッフにそう答えるしかなかった。

「そ、そう……」
「おかしいかな……?」
「ううん、夏らしくていいんじゃない……似合ってるよ」

 同期入社で、彩の一番の親友でもあった香織は、彩の突然の心変わりに納得がいかないながらも、こう答えるのだった。

 やがて本番が始まった。この日の彩は明らかにいつもと様子が違っていた。表情が固く、原稿を何度も読み間違えた。またとりわけ、いつも視聴者の目を楽しませ、パンチラの淡い期待を抱かせる、細いキレイな足を、この日は過剰なほどぴったり閉ざして、動かさなかった。

 その甲斐あってか、ミスは多かったものの、彩は短くなったスカートで、何とかパンチラの失態を犯さずに、無事生放送を終えることができた。

 しかし、放送終了後も彩の顔は冴えなかった。動画を公開されてしまったのではという不安が、彼女の頭を埋め尽くしていた。

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