羞人たち


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彩 第一章 1
2011/07/13 20:26

 膝上20センチのスカートで放送に臨むよう脅迫された彩。昨夜無視したことで公開されてしまった動画を削除させるためには、もう相手の言うことを聞くしかなかった。

 翌日、本番10分前にスタジオ入りした彩は、スタッフがアッと驚くほどの短いスカートを穿いていた。黒の無地のタイトスカートで、丈は膝上20センチ、いや、股下10センチと言った方が早かった。露出した太ももは、ほとんど足の付け根まで見え、ちょっとかがんだらすぐに下着が見えてしまいそうだった。その太もも露出の彩のミニスカ姿は、普段清楚な衣装を見慣れているだけに、スタッフの目にはなお違和感があった。

 彩はスタジオへ歩いてきながら、短すぎるスカートの裾を、恥ずかしそうに手で伸ばしていた。顔は真っ赤だった。自分のむき出しの太ももへ突き刺さるスタッフの視線が、彩には痛いほど感じられた。男性スタッフの、驚きと喜びの混ざった露骨な眼差し。女性スタッフ、また共演の女子アナ2人の、不審そうな表情……。それらの視線を避けるように、彩は顔を伏せながら歩いた。

 それは命令どおりの姿だった。犯人の要求どおりの、膝上20センチのミニスカート。本番前、スタイリストに無理を言って用意してもらい、そのスタイリストの反対を押し切って、スタジオへやってきたのだった。

「どうしたの、彩!」と、その彩のミニスカ姿を見ると、先にスタジオ入りしていた真希は、すぐさま駆け寄って訊ねた。「昨日より短くなってる、下着見えちゃいそうだよ……」
「う、うん……」と彩は答えたが、真希と目を合わせられなかった。
「衣装として用意されてたの? もしそうだったら、あたしが抗議してあげようか?」

 まさか彩が自分で頼んで用意してもらったとは思えなかった。だから真希は、これはきっと番組のスタッフが、スタイリストに命じて、彩に短いスカートを(それもこんな極端に短い卑猥なミニスカートを)用意させたのだと、思い込んでしまっていた。同じ女子アナとして許せない、タレントやアイドルでもない、局の女子アナに、こんな短いスカートを穿かせて、色気で視聴者を釣ろうだなんて……。スタッフへの怒りと、彩への同情が、真希の頭を満たした。

 しかし彩の答えははっきりしなかった。

「ううん、いいの……」と彩は相変わらず下を向いてスカートの裾を恥ずかしそうに伸ばしながら、「大丈夫、あたしこれで出るから……」
「でも……」
「そ、それにほら、この番組生放送だし、季節に合わせた格好をしないと、視聴者の人に伝わらないから……」
「それはそうだけど……」

 けど、さすがにそこまで短いスカートでは、もはや夏らしさを通り越して、下品になってるとは、いくら親友といえども真希には言うことができなかった。

「彩がそう言うんなら、あたしは全然構わないけど……」と真希は納得いかない口調で言った。「でも、本番中は気をつけた方がいいよ。特に椅子に座ってるとき、足を開かないようにね」
「え?」
「番組中に下着が見えちゃったりしたら、最悪だよ。生放送だから、編集はできないし、そんなことになったら、すぐにネットに載せられちゃうよ」
「う、うん……気をつける」

 しかし、本当は気をつけるどころか、放送中、椅子に座っている間は、常に足を開いていなければならないのだった。ヒザをこぶし一つ以上……。今のこの短いスカートなら、その程度の足の開きでも、下着は確実に見えてしまうだろう。しかも椅子に座るとなると、伸縮性の少ないタイトスカートは大きく上へずり上がってしまうのだ。原稿やハンカチで隠すことはできない。だからパンチラどころか、パンツまる見えになってしまう恐れがあった。

(どうしよう……本当にこの格好で足を開かないといけないの? テレビの生放送中に……たくさんの人が見ている前で……)

 そんなこととても出来るはずはないと思ったが、やらなければ自分の裸の動画をネット上に公開されてしまうのだ。ぼかし無しの、自分の名前付きで……。それだけは絶対に避けなければならなかったが、しかし生放送中のパンチラも、彩には同じくらい嫌だった。

 足を開くか開かないか……そのことで、彩は一日中悩み続けてきた。そして結局、どうするかはっきり決まらないまま、本番を迎えることになってしまった。

「はいでは本番始まりまーす! 10秒前、9、8、7……」

 彩はカメラの前に立った。もう逃げることはできなかった。

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