羞人たち


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優香 第七章 1
2009/09/19 00:01

 合宿が終わると大会がやってくる。三年生にとって高校生活最後の試合。この大会を最後に部活を引退することになっている。

「優香、ちょっと」と試合の前日優香は香織に呼び出された。
「はい?」
「あんたの明日着るウェアのことだけど……」

 優香は嫌な予感がした。

「いつもの試合用のユニフォームじゃないんですか?」
「いや、違うよ」
「じゃあこの体操服ですか?」
「いや、それでもない」
「じゃあ……何でしょう?」と優香は震える声で香織に尋ねた。
「これよ」

 そう言って香織は紙袋を渡した。

「これを着て明日来るのよ。他には一切何も着たらだめだからね。家からラケットだけ持って、試合会場まで来なさいね」


――――――――――――――――――――――――

 翌日、試合会場となる運動場の、六面あるテニスコートを囲む観客席の一角に、香織たちテニス部一行は集まっていた。みな試合前の緊張をほぐそうと、おしゃべりしたり、軽いストレッチをしたりしてくつろいでいた。

 とそこへ優香がやってきた。

「おはようございます……」
「遅いよ0年! もう先輩たちはとっくに……」

 そう叫んだ一年生部員だったが、近くまで来た優香を見ると、驚きで言葉が詰まってしまった。

「な、なにあんたその格好!」

 他の部員たちも優香を見ると思わず話すのをやめ、ストレッチしていた体を止めた。

「うそでしょ……信じらんない」

 それもそのはずだった。現れた優香の格好を見れば驚くのも無理はなかった。

 それは一見、みたところ普通のテニスウェアだった。無地の白いワンピースのテニスウェア。丈も特別短いわけではなく、通常のテニス用のものと変わらない。が、それは一瞬の見た印象に過ぎない。よく見るとたちまち一目瞭然、いま優香の着ているウェアが、異常に薄い生地でできていることがわかる。

 すなわちそれはティッシュペーパーで作られたワンピースのテニスウェアだった。薄い紙のティッシュを糊で繋ぎ合わせただけのものだった。そのため、それは着ている本人の裸を隠すのに何ら役に立たず、胸の膨らみ、ピンクの乳首、お腹のへそ、お尻の割れ目や、果ては股間の割れ目まで(なぜなら下着も紙製であったから)ありありと透かしているのだった。

 全身透け透けの紙のワンピース……これが、前日に香織から渡された優香の試合用のテニスウェアだった。

「あら、似合ってるじゃない」とさっそく香織がやってきて言った。
「お、おはようございます……」
「どう? あたしが作ってあげたウェアの着心地は? 軽くて動きやすいでしょう?」
「……」
「このあたしがわざわざ10分も掛けて作ってあげたのよ」
「あ、ありがとうございます……」
「どう気に入った? 透け透けでみんなに乳首見てもらえて嬉しいでしょう?」
「……」
「どうなんだよ! 嫌だなんて言ったら裸で試合させんぞ!」
「い、いえ! とても気に入りました……嬉しいです……」
「ホント優香って変態だよな、乳首まる見えで嬉しいんだってさ!」
「……」
「それにその格好でよくここまで来れたもんだよ。胸とお尻が透け透けのそんな服装で電車に乗って、どこからどうみても頭のおかしな露出狂女じゃない!」

 優香は家からの自分の辿ってきた道を思い出す。人々の好奇な眼差し、軽蔑の視線、聞こえよがしの悪口や舌打ち、子供の目を覆い隠していた母親の自分を睨みつける顔……思い出しただけで恥ずかしさが蘇ってくる。そしてその恥ずかしさは今も続いている。周りにいる他校の女子部員たちが、自分を見ながらひそひそ噂している、その冷たい笑い声が嫌でも耳に入ってくるのだったから。

 優香は屈辱と恥ずかしさに顔を真っ赤にして耐えながら、果たして今日の試合を自分は無事に終えることができるだろうかと(その可能性は極めて薄そうだった)絶望的な思いで考えていた。

カテゴリ:優香

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