羞人たち


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優香 第十一章 6
2010/10/29 07:37

 長かった開会式もようやく終わった。式が済むと生徒はそれぞれ生徒席へ散っていく。やがて競技の準備がされ始め、お馴染みのBGMが響き出す。これにより観客・生徒の関心も徐々に再び本来の体育祭の方へと向かっていくかに見えた。

 が、生徒席に着いた優香を待っていたのは自分に対する露骨な扱いだった。

「露出狂だけで充分なのに、そのうえ嘘つきって最低よね」
「朝来たらブルマ切られてたって、人のせいにしちゃうんだもんね」
「自分で切ったのバレバレなのに」
「パンツ穿いてない時点でアウトでしょ!」

 そういう言葉があちこちから耳に届いてきて、優香は一時も心が休まらなかった。

 と、そこへ別のクラスの一人の女子(体育祭になると急にはり切るタイプの不良女)が優香の目の前に来て言った。

「あんたさぁ、その格好で競技に出るつもり?」
「……」
「目障りだから消えてくんない? マジむかつくんだけど」

 そして優香の透けた乳首を、また露出したおま○こを軽蔑の眼差しで睨みつけ、行ってしまった。もはやどこにも優香の居場所はなかった。もちろん優香本人もその女子の言う通りこの場から消えてしまいたかった。が、それは千夏が許さない。千夏は生徒席の目立たないところでじっとしていようとする優香を無理に歩かせ、必ず人の多いところへ向かわせようとするのだった。

「お! さっきの子がこっちに来たぞ」
「わざわざ観客席まで来て見せびらかすなんて」
「ホントに見えてるんだな。近くで見るともう丸出しだぜ!」
「ノーパンで、毛まで剃って、準備が入念ね!」

 優香は歩きながら自分に向けられる冷たい視線を嫌というほど感じた。四方八方から発せられる悪口。露骨な嫌味。それを聞きながらも、優香はしかし何の用事もないのに観客席の周辺をうろうろ行ったり来たりする。千夏は離れたところで他人のように監視しているだけなので、そうなるとたった独りで観客席をうろついている優香の行動は、完全に優香自身の意思としか見えなかった。

(これでは本当に……)と優香は思った(あたし露出狂じゃない……)

 と、そんなことを思いながら屈辱と絶望に胸が張り裂けそうになっていたとき、観客席の向こうの方に、優香はふと見覚えのある三人組がいるのに気付いた。優香の顔がその瞬間引きつった。その三人とは紛れもない優香の中学時代の親友たちだった。

 優香はとっさに後ろを向いてその場から立ち去ろうとした。が、少し行ったところで千夏に止められてしまう。

「なんで逃げるのよ?」
「でも……あそこに友達が……」
「友達? ああ昨日メールした? じゃあなおさらいなくなっちゃダメじゃない。挨拶しにいきなさいよ」
「いや、でも……いまのこんな格好じゃあ……」
「こっちから招待しといて、挨拶にも行かないなんて失礼だと思わないの!」
「それはそうだけど……」
「行きなさいよ。向こうももう気付いてるみたいだよ」
「え?」

 そう言って振り返ると、たしかに例の三人組が自分の方を見ていた。が、なんというかそれは、見てはいけないものを見ているというような、またはあまり関わりたくないとでもいうような、そんな、優香に対する見方だった。優香は三人の視線が自分のお尻に向けられているのを感じる。食い込みすぎて今ではもうTバック状に丸出しになってしまっているお尻を三人は何やら不審そうに見つめている……

「ほら、行きなさいよ。それともあんた、あの子たちのこと無視するの? その方がよっぽど嫌なやつだと思われるよ」
「……」

 優香はまだしばらく考えていた。が、やがて決心したように、

「わかりました、行きます……」

 と言って三人の方へ向かおうとした。

「いや、ちょっと待ちなさい。その前に……」

 と千夏が呼び止める。

「その前に、あんた何て言うつもり?」
「何てって、なにをですか……?」
「だから、そのいやらしい格好についてよ。聞かれたらあんたどう説明するつもりなの?」

 優香は顔を赤らめた。

「どうって……別に……」
「どうせまた嘘つくんでしょう? 切られたとか何とか言って?」
「でも千夏ちゃんの名前は出しません。絶対に……」
「そんなのは当たり前。それより、嘘をつくのが問題よ」
「別に嘘ってわけじゃあ……」

 千夏が睨みつける。

「それじゃあ、なんて説明すれば……?」
「なんて説明すればいいか? それはねえ……」

 千夏は優香の耳元にしばらく何やら囁いていた。聞きながら優香の顔色が徐々に青ざめていくのが遠くからでもわかった。

カテゴリ:優香

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