羞人たち


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優香 第十二章 8
2011/03/07 08:21

 走り去る少年を見送る優香。しかしその心は、少年から受け取った紙袋のことで、不安でいっぱいになっていた。

(なんだろう……?)

 やがて少年の姿が見えなくなると優香は思った。そして紙袋をちょっと持ち上げてみて、その重さを確かめる。

 軽い。まるで何も入ってないようだ。

 しかしわざわざ子供を使ってまでして届けたのだから、何もないなんてことはあり得ない。何かしら、必ず、この紙袋の中に、入っているはずだ。

 そう思うと優香は意を決して紙袋の中を覗き込んだ。それがどんなものであれ、いまの素っ裸の状態よりはマシだと思ったからだった。胸も性器もまる見えの、この生まれたままの姿よりは……

 白い衣服のようなものがまず見えた。それを見た優香は、何であれ中身が衣服であったことに、とりあえずホッとする。

 そして紙袋の中にそっと手を入れ、その、白い布製の衣服をおそるおそる取り出した。

 優香は一瞬ハテナと思った。彼女がおそるおそる取り出したその白い衣服とは、この学校の、男子生徒用の、白い短パンだったからである。特に細工が施されているわけでもない、標準サイズの、白い短パン……

(なんで男子の短パンが……?)

 と不思議に思いながらも、優香は紙袋の中にまだ何か入っていないかと思って手を突っ込む。

 続いて彼女が取り出したのは、赤いハチマキ。使い古され、少し色褪せた、だが何一つ変わったところのない学校の備品のハチマキだった。

(ハチマキ……? どうしてハチマキなんだろう……?)

 しかし考えている暇はない。そして紙袋の中に残っている物をさっさと取り出そうとする。

 が、それで終わりだった。紙袋の中に入っていたものは、その二つですべてだった。いや、底の方に、微かな紙の手触り……優香は顔青ざめながら、その一枚の紙切れを取り出した。

 それは彼女に宛てた手紙だった。鉛筆で簡単に次のように書かれていた。

『もうすぐ騎馬戦が始まる。これを着て参加するように。もし不参加だった場合は、教師生命のすべてを賭けて、お前を探し出し、裸のまま、グラウンドへ連れていく』

 そして手紙の最後のところには『田崎』という署名が、はっきり大きく書かれていた。

 優香は頭が真っ白になった。体の力が抜け、そのまま地面にしゃがみ込んだ。そうして、しばらくそのままの体勢で、膝の中に顔を埋め、目を閉じて暗闇に心を浸していた。

 その手には、男子用の白い短パンと、騎馬戦用の赤いハチマキが、今ははっきり理由がわかったうえで、力なく握られていた。

カテゴリ:優香

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